会社設立後の労務手続き
会社を設立したら経営者にとって早急の課題はいかにして売り上げを確保するか、利益を上げるかということになるでしょう。
しかし、それと同時に会社の体制づくりも進めていく必要があります。売り上げの確保や利益を上げるということがいわば経営の「攻め」であるならば、会社の体制づくりはいわば「守り」です。
社長一人で会社を運営していくのであれば会社の体制を整えていく必要もありませんが、人を雇って事業を発展させていくつもりならば「守り」についても当初からしっかりと考えてるべきでしょう。
会社は労働基準法等多くの法律や規則を守った上で、人を雇う必要があります。このページでは、会社の礎となる従業員の採用に関することおよび、採用した人に対して行わなければならない必要な手続きについてご説明いたします。
従業員の採用(労働条件の明示)
従業員を採用する際は、その従業員に賃金や労働時間等の労働条件を明示しなければなりません。明示事項は書面によって交付しなければならないもの、口頭のみでもよいものとありますが、一般的には労働条件通知書等によって明示します。会社は従業員に対して労働条件を明示する義務があり、これを怠った場合、労働基準法120条により罰則(30万円以下の罰金)が課されます。
労災保険の加入
労災保険は、従業員ごとに何か手続きをして加入させるという訳ではなく、全従業員が自動的に加入されます。ちなみに、不法就労の外国人にも労災保険は適用されます。
労災保険とは、従業員が業務上あるいは通勤途上、ケガをしたり、病気をしたり、障害を負ったり、不幸にも死亡された場合に、その従業員や遺族を保護するために必要な給付を行う保険です。
労災保険料は従業員が負担することは無く、全額事業主が負担します。
会社を設立して従業員がいる場合は、労働保険(労災保険と雇用保険の総称)保険関係成立届を提出し、労働保険の概算保険料を申告納付することになります。
雇用保険の加入
会社は、従業員が週所定労働時間20時間以上で雇用見込みが31日以上であるなら、その従業員を雇用保険に加入させなければなりません。
雇用保険とは、労働者が失業した場合等に、労働者の生活や雇用の安定のため必要な給付を行う保険です。再就職の援助なども目的とされ、雇用保険制度は、雇用に関する総合的な機能を持った制度と言えます。
従業員を雇用保険に加入させるためには、会社自体が雇用保険の適用事業所になってなければなりません。
雇用保険の適用事業所にするには雇用保険適用事業所設置届という書類で手続きを行います。
社会保険の加入
会社は、常時雇用されている従業員や常時雇用されている従業員の概ね3/4以上の労働時間・労働日数を働くパートタイマー等を社会保険に加入させなければなりません(※従業員500人以下の場合の基準)。
社会保険とは健康保険(介護保険含む)と厚生年金保険をいいます。健康保険とは、私傷病の出費に対して自己負担が軽減されたり、傷病や出産に対して手当金が支給される等の保険制度です。
厚生年金保険とは、公的年金制度の一つで、全国民共通の基礎年金に上乗せ支給される報酬比例の年金制度です。
基礎年金を一階部分とすれば厚生年金保険は二階部分と言えます。従業員を社会保険に加入させるためには、会社自体が社会保険の適用事業所になっていなければなりません。
社会保険の適用事業所にするには健康保険・厚生年金保険新規適用届という書類で手続きを行います。